携帯を開くとメールが一件着ていた。さっき震えていたのはこれかと思って本文を見る。
『つばめが巣を作ってたよ』
句読点もないその一文で本文が終わり、画像が一枚添付されていた。本文から予想した通り、つばめの巣の写真だ。ズーム機能を使って撮ったと思われる荒い画像の中では、雛と思しきものが、真っ赤な口内を見せていた。
あきらは時折こうした意味のないメールを送ってくる。道ばたに咲いたタンポポの写真や、公園にいた子猫の写真。
そんなものは東京でも京都でも、どこでだって見られるのに。
日常の中にあるものばかり撮って寄越すあきらの真意がいまいちわからず、赤司はいつも当たり障りのない一言を返していた。
かといってそれで怒るようなこともない。
「あら、征ちゃんが携帯見てるなんて珍しい。どうしたの」
年上のチームメイトが微笑みながら声をかけてきた。「メールが着たんだ」と返事をする。
「メール?」
「ああ。ちょっと返しに困る内容だったから」
「なによそれ」
悪い方に勘違いしたようで、眉を顰めてしまった実渕に、赤司は携帯を差し出した。別に見られて困る内容でもない。
「……つばめね」
「うん」
「つばめだわ」
「ああ。いつもこんな感じのメールが送られてくるんだ。花だったり、猫だったり」
「いつも……」
少し考えた後、実渕はにっこりと笑って、かわいい子ね、と言った。言いたいことがよくわからない。
「彼女、東京でしょう? 離れていても、征ちゃんと同じものが見たいのよ。かわいいじゃない」
「……なるほど」
「何か写真送ってあげたら?」
そう言われて、何を撮ろうか考えてはみたものの、さっぱり思い浮かばない。そういえば今日は晴れだったと思って、空を写してみた。
『こっちは晴れだよ』
数分して携帯が震える。
『こっちは曇り』
添付された写真はやっぱり、こちらでも見られるただの曇り空である。ただ、今彼女はこんな空の下にいるのかと思うと、少し特別なものになった気がした。