明日はクリスマス。イエス・キリストの誕生日である。恋人たちや家族たちが浮かれ踊るめでたい日である。
幸いなことに、今年のクリスマスは我らが秀徳高校バスケ部には関係がない。ウィンターカップがあるからだ。
キセキの世代、緑間真太郎を擁する秀徳高校は危なげなく一回戦を通過した。クリスマスに二回戦がある。
負けることは全く心配していなかったりするが、それでも油断は禁物だ。世の中に絶対はないと、私もみんなも夏の雨の日に知っていた。なので少しでもやれることをやっておくため、携帯を取り出して、明日のおは朝のラッキーアイテムを調べた。
蟹座の12月25日のラッキーアイテムはクリスマスカード。見事にイベントに乗っかっている。
他の星座のそれらも同じようなものだったので、明日の部員の鞄にはそれぞれリースやらサンタ帽やらがこっそり入っているのだろうと私は思った。
チームのエースが与える影響は結構バカにできないし、うちのチームの人間はみんな律儀なのである。そのくせ素直でない。
だからきっと緑間は、自分がそんなに影響を周囲に与えているだなんて知らないだろう。
蟹座は緑間の星座であるだけではなく、自分の星座でもあったから、私は帰り道に入ったコンビニでクリスマスカードを買った。
クリスマスツリーと、サンタ帽を被った雪だるまが描かれている、シンプルなものだった。シンプルすぎて寂しい気がして、風呂に入りながら少し考え込み、部屋に戻ってペンを握り、ちょっと書き込んでから、眠った。
「緑間」
試合前の控え室で、ベンチに座って、真剣に指先を見つめている緑間に声をかけた。
集中すべき時間に声をかけるのはマネージャーとして褒められることではないのかもしれないが、緑間は特になんとも思わなかったようで、「なんですか」と普通の顔で私を見上げた。
「クリスマスカード、出して」
怪訝な顔をした緑間が、先輩である私の命令を無視できず、鈍い動作でポケットに手を入れ小さな二つ折りの紙を取り出す。
ずいぶん小さいなあと思いながら、大きな手のひらの上に乗ったそれを取り、代わりに昨日買った大きなクリスマスカードを乗せた。
「交換ね」
「……」
「クリスマスカードって、人に送ったり送られたりする物でしょ。本来の使い方した方が、きっと効果あるよ」
ラッキーアイテムは大きい方が効き目があるだの、効力は店によるだの、おかしな理屈をよく持ち出す緑間である。案外あっさり納得したようで、なるほどという風に頷くと、もう一度私を見上げて、「しかしこれではポケットに入りません」と言う。
「……そこは自分でどうにかしてよ」
私に言われても、と無責任にも丸投げした。
試合に向けてみんながコートでアップをしている間に、緑間が持っていたクリスマスカードをそっと開いてみた。
そこには袋を背負ったサンタクロースの絵が描いてあるだけで、メッセージも何も書かれていない。人にあげるつもりではなかったのだから当然である。
緑間もこうして私のカードをあとで開くのだろうか。そこに書いてあるメッセージに気づくかな、と考えてみる。
しかし気づいても気づかなくても、私が今更言うまでもないことなので、まあ別にどっちだっていいのだった。