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怖い話をしよう/海常/krbs

私がまだ小学生だった頃だから、もう五年は前のことになるのかな。親戚のおじさんが亡くなったとかで、お母さんに連れられてお葬式に行ったのね。親戚って言っても、ほとんど会ったこともなかった人だから、悲しいとか寂しいとかそんなことはなかったなあ。焼香して手を合わせて、どうぞ安らかに眠って下さいとは思ったけど、ほんとにそれだけ。
で、私ははやく帰りたかったんだけど、人手が足りなかったらしくて、お母さんがお手伝いすることになった。小学生一人で帰れる距離じゃなかったから、終わるまでその辺でおとなしくしてなさいって言われてさ。時間潰そうにも、周りは忙しく働いてる大人ばっかりだし、ゲームとか遊び道具も持ってきてなかった。仕方ないから家の中を探検してたのよ。葬式のあった家って結構大きな日本家屋でね、家の構造がもの珍しくてそれなりに時間潰せたなあ。
それでもね。やっぱりしばらくすると飽きちゃって。濁った池に拾った木の枝つっこんで、生き物がいないかつっついてた時だった。

『たいくつなんですか』

声をかけられてさ。ふっと顔を上げたら、男の子がいたの。なんだ子どもいるんじゃん、と思って、うんって返したら、『僕もなんです』って笑ってた。
その子、なぜかバスケットボール持っててさ。二人でボールの取り合いとかして遊んだんだけど、ほら、私運動神経あんまりよろしくないから、すっごい下手くそだったよ。でもその子も下手だったから、お互い様かなあ──。
 

「──オレ、その話のオチわかるっス」

電気を消して真っ暗になった部屋、布団の上で輪になって、私たちは細々と怪談話をしていた。合宿といえば怖い話っしょ!!と、黄瀬がだだをこねたのである。順繰りに聞いた話やら体験談やらをしていて、今は私の番なのだった。とりあえず子どもの頃にあったそれっぽい話をしてみたのだが、懐中電灯で顔を不気味に照らしながら、黄瀬が割り込んできた。

「……え、なんで?」
「気が付いたらその男の子はいなくなってて、お母さんに後で聞いたら今日はあんたのほかに子どもは来てなかったはずよとかそんなんでしょ! ありがちっス!」
「お前のわがままでこんなことやってんだから話くらい最後まで聞いてやれ。で、高遠、本当にそんな話なのか」

不満げな黄瀬とは違い、左隣に座る笠松はできた人間である。ちなみに右隣の早川はさっきからグースカ寝ている。さっき小堀が布団をかけてやっていた。
最後まで話すと言ったって、話としては黄瀬が言ったとおりなので、これ以上付け加えることもないのだが。

「あー……、そうだね。お母さんにはそんな子いなかったって言われたし、私も何故かその子の顔とか全然思い出せなくて」
「怖くはないけど、不思議な話だな」
「そうなんだよね。夢でも見てたんでしょって言われる始末よ」
「ホントに夢だったんじゃないッスか」
「違うし! 名前はちゃんと……えっと、そう、てつやくん! てつやくんっていう名前だった」
「テツヤ?」
「そう! まあ子どもの割に口調が馬鹿丁寧っていうか、なんか変わった子だったから、幽霊ならそれはそれで納得なんだけどね」

寂しかったから私の前に現れたのかなあ、もう成仏してるだろうか、とか呟いていたら、いつの間にか私以外の全員が黙り込んで、顔を見合わせていた。

「どうしたの?」
「高遠センパイ、前の誠凛との練習試合の時って……」
「あぁ、風邪引いて休んでた日だね」
「……これってもしかして」
「可能性はかなり高いっス……」

笑い出すのをこらえているような、妙な表情を浮かべるみんなは、懐中電灯の光とあいまってなんだか不気味だった。