Skip to content

ピアスの話/硝子さん

「別にいいけど」
「やったー!!」

ピアス開けたいけど自分でやるのは怖いから硝子がやって、お願い、一生のお願い、と畳みかけたあきらは思いがけず簡単に了承をもらった。
常日頃から医務室に入り浸っている同級生は、先生が不在なのをいいことに医務室の備品を勝手に取り出している。脱脂綿に消毒液を含ませながら、あきらに「座れ」と言った。

「はーい」

耳を消毒してくれるのを少しくすぐったく思いながら、あきらは硝子の手がピアッサーを持つのを待った。

「いやあ、失敗したら怖いからさあ、硝子にやってもらえてよかった」
「……まあ私も失敗するかもしれないけどね」
「まさかあ、信用してますよ」
「そうだな」

上機嫌であきらが言うと、硝子は数回瞬きをして、あきらを見る。

「失敗しても、成功するまで何度でも塞いでやるから安心しろ」

それはちょっと怖くない?とあきらは思った。