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スカートの話/狗巻

呪術高専の制服に規定はない。ついでに校則もない。
どういうの着たいとか希望あったら言いなね~と最初に担任に聞いたことを思いだし、実習で一張羅をダメにしたあきらはちょっとスカートを短めにしといてくださいと希望を上げて、新しい制服の完成を待った。
新しい制服はわりとすぐに支給された。

「狗巻、ハヨー」

教室に入ると、まだ狗巻しかいなかった。
ひらっと手を挙げて適当な挨拶をした後、隣の席にすとんと座る。座面に素肌が触れて少しひんやりした。ちょっと短すぎたかとも思ったが、これからの季節にはちょうどよさそうだ。

ふと横を向くと、狗巻がじっとあきらを見ていた。

「? 何?」
「…………ツナマヨ」

え、わかんない。
と思ったら狗巻は立ち上がり、自分のロッカーに手を突っ込んでごそごそやっている。
あきらが不思議そうに見つめる間に目的のものを見つけたらしく、くるっと振り向いて数歩で目の前にやってきた。

「明太子」
「…………はい?」

差し出されたのはジャージである。ずいっとあきらに近づけるので、柔軟剤の清潔な香りが鼻の先を擽った。

「履けって?」
「しゃけ」
「やだよ、なんで」
「おかか」
「やだって」
「おかか!」

何を言おうと狗巻は首を横に振るばかりで、あきらはとうとうジャージを手に取った。そのままわざわざ後ろを向いた狗巻を睨みながらジャージを履く。
真新しい制服にジャージという奇妙な格好が出来上がり、不満そうに机に肘をついたあきらをよそに、狗巻は小さく息を吐いていた。