雨。ぽつぽつと降り出したそれに気付いて、恵が眉間に皺を寄せた。
今ここにいる三人の誰も傘は持っていないので、屋根のある場所を探して雨宿りするか、それともずぶ濡れを覚悟で走るか。
振り返ると呑気なあきらと五条がいた。
「恵、こっちおいで」
手招きされるが動かない。仕方ないなと言わんばかりに、あきらがよってきた。
「五条とくっついとけば濡れないから。おいで」
「アイツとくっつくくらいなら濡れる方がいい」
「……だってさ、五条」
嫌われてるねえとあきらがからかう。
五条は珍しい表情で彼女を一瞬睨むと、そのまま大股で恵に近寄って来た。
「うわっ!」
動きは素早く、抵抗する隙もない。あっという間に肩車なんてされてしまい、突如高くなった視点に恵は一瞬呆然とする。
「ホント生意気だよねえ恵は」
このまま行くよ〜、とわざとらしい伸びた声で五条は言う。雨は強くなっているのに、水の粒は一つも当たる事はなかった。