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卒業後

雨が降ってきた。でも傘がない。
高専にいた頃は、毎年のようにこんなシチュエーションがあった気がする。大抵隣には五条がいて、今回もやっぱりそうだった。自分も買うものがあるとかでわざわざ買い物に付いてきた五条が、空を見上げている。

「折り畳みとかある?」
「ない」
「参ったねえ」

ちっとも参ってなさそうな口調で言われても。
そのまま五条は辺りをキョロキョロと見回して、コンビニの看板を目敏く見つけると、あきらを残して大股で歩いて行ってしまった。
程なくして戻ってきた手にはビニール傘。
ばさ、と差して、ホラと言いながらこちらを見る。

「……入れてくれるんだ」
「当たり前だろ。僕をなんだと思ってるわけ」

初めてのパターンに、少しだけ戸惑いながら、五条の隣に体を寄せた。