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二人目

入学前に高専を下見に来る生徒は案外多い。以下略。そんなこんなで高専の敷地に続く鳥居の途中に見慣れない制服の女の子を見つけた時、あきらは来年の一年だなーと直感した。
制服姿で石段の途中に佇み、煙草をふかして一休みをしている生徒はなるほど負けず劣らずと称されても仕方ない。彼女はこちらに気づくと、大して驚くでもあわてるでもなく、「こんちは」と挨拶をしてきた。ふふっと笑って、あきらは彼女までの十数段を一気に駆け上がる。

「来年の一年だよね?」
「そうでーす」
「車出してもらえばよかったのに」
「歩きたい気分だったんで」
「そっか」

高遠あきら、今の一年だとあきらが自己紹介すると、彼女は家入硝子、と名乗った。見学来たなら案内してあげるよと続ければ本当に喜んでいるのかよくわからないテンションでやったーと返される。
あきらは笑って、少し前と同じ質問をすることにした。硝子のペースに合わせて石段を登りながら、今度の一年さあ、と切り出す。

「結構すごいの入ってくるって噂があって」
「へー」
「もしかして硝子ちゃんのことなのかな?」
「んー……」

硝子は少し首を傾げ、しばらく考えた。その後あきらをまっすぐに見ながら、ぐっと親指を立てる。我こそは、と聞こえてきそうなジェスチャーに、あきらも親指を立てて返した。