入学前に以下略。三人目だろう少年が、応接室のソファーで一人ふんぞり返っている。通りがかりの補助監督にお茶とお菓子を出しておいてほしいと頼まれたときはめんどくさーと思ったが、こういうことなら文句はない。
「アンタ高専生?」
白髪に空のような青い瞳、整った顔立ち。あきらも呪術師の端くれなのだから彼の名は聞かなくてもわかる。御三家がひとつ、五条家の嫡男、五条悟だ。
とはいえ未来の後輩なのだから、畏まるつもりはさらさらない。そーだよと頷くと、五条は値踏みするようにあきらをじろじろと見た。
「じゃあ先輩か」
「そうなるね。まあよろしく」
「ん」
高遠あきら、と名乗れば五条悟と知っている名前を返される。偉そうではあるが、気取った様子も驕った様子もない。家名ばかり目立つけれど、どうもそこそこ普通の少年らしい、とそんな印象を抱いた。
そしてあきらはまた同じ質問をする。
「五条くん」
「悟でいい」
「じゃあ悟くん。実は来年、すごい新入生が入ってくるって噂になってるんだけどね」
「……へーえ?」
「君のことなのかな?」
あきらが尋ねると、五条はくっと口の端を吊り上げた。
「当たり前だろ」
三者三様。
だがしかし全員が、あきらの問いに同じ自信を返してくる。
これは楽しい学年になりそうだ。来年からの夜蛾の苦労を見越して、あきらは内心腹を抱えて笑った。