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巻き戻し3

なんだか本当にらしくないところを見るなあ、と突然作戦会議中の貸し会議室に現れた五条とあきらを見て、悠仁は思った。
サングラスをしているからはっきりとはわからないが、五条は薄い唇をひん曲げて、なんとも言えない顔付きで立っている。その横に陣取るあきらは至極真面目な顔で、五条の腕をしっかりと掴んでいた。

驚いたのは七海と伊地知だ。あまり感情を表に出さなさそうな七海でさえ、しばらく言葉を失って二人を見ていた。

「……どうしたんですか、五条さん」
「どうしたもこうしたもないよ」

あきらを横にくっつけたまま、ずかずか長い足で室内に入ってくると、五条はホワイトボードに貼ってあった地図を眺めた。近辺の行方不明者、変死者が点々と示されているそれを眺めて、「ふうん」と呟く。

「で?どこ行けばいいの?」
「下水施設」

顔の向きからして多分七海に問いかけたのだろうが、答えたのはあきらだった。「地下だよ。早く」と続けながらあきらが腕を引いている。

「五条さん?他の任務があったのでは?」
「あったよ。ていうかあるんだけど。仕方ないじゃん、こっちの方が優先だって言うんだもん」
「早く」
「わかったわかった。場所聞いてからね」
「えっ七海先生さっきまだわかんねえって」
「先生はやめてください」
「じゃあナナミン?」
「ひっぱたきますよ」

悠仁と七海が漫才のような会話をしているうちに、伊地知に地下施設のある場所を聞き終えた五条は、来たときと同じようにずかずかと出口へと向かった。
どうやら詳しく話す気はないようだ。自分が対応するよりも、五条に任せた方が確実なのはもちろんわかっているが、なんとなく面白くない。そう思った七海に、少女の高い声がかかる。

「七海さん」
「……はい」
「吉野順平とそのお母さん、今すぐ保護してください」

言ったっきり返事も確認せず、二人は出て行ってしまった。後には沈黙だけが残る。残された三人は顔を見合わせて、大きな溜息を吐く、困ったように笑う、状況を把握できず首を傾げるなど、各々の反応をする。

「……どうします?」

伊地知が尋ねた。

「一旦言う通りにしましょう。吉野順平を保護します」
「ウッス!」

何故か敬礼と共に、悠仁がいい返事をした。