Skip to content

私が最強

二年になってしばらくたったある日、いきなり、五条先輩より強くなってしまった。昨日まで組み手をやっても手加減に手加減を重ねた上で軽く転がされていた私なのに今日は軽く掌底を食らわせただけで壁までぶっ飛ばしてしまったし、その衝撃で五条先輩は気を失ってしまった。夏油先輩が久しく見なかった素の驚き顔で五条先輩に走り寄る。家入先輩が反転術式で怪我を治している。マジかと思って試しに壁をデコピンしてみると、結構信じられないくらいの大きさの穴が盛大に空いた。続いてガラガラと壁が崩れる、こちらを見ていた七海がちょっと引いている。

「……一体何やったんだよ」

意識を取り戻し、顔に手当のあとを残した五条先輩が、恨めしげな、納得できていなさそうな顔をして問いかけてくるが、私も正直答えを持たない。

「わかりません」

そのまま答えるとますますむすっとした顔をして私の頬をつねる。私は最強なので、最強じゃない五条先輩のやっかみを甘んじて受け入れた。

「わからねえわけねぇだろ」
「術師の成長は、突然なんです」

いや何がきっかけだったかは本当にわからないけど。

ただやることははっきりしていた。これからは私が、五条先輩の代わりに、最強の責任とか義務とかみんなの命とか、そういう重荷をすべて背負うのだ。