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夢で逢えたら

ついこの間獄門疆に封印された五条先輩と、夢の中で会った。夢の中の先輩はこちらに気づくと「よっ」と気楽に手をあげて、口の端を持ち上げる。私はそののんきな姿を睨みつけた。

「よっじゃないんですよ」
「何怒ってんの」
「外は大変なんです。もうめちゃくちゃで」

たくさん人が死んだし今も死んでいる。この人一人で保たれていたものが多すぎた。東京周辺はもうダメだ。昔二人で歩いた町も今や呪霊の巣で、追い打ちをかけるように日本の各地では悪趣味なゲームが仕掛けられている。
報告のような、罵りのようなそれをしばらく続けた。
起きているとき、今は誰にも弱音を吐けない。脆いところを見せた人間から波及して全てが崩れていく気がするからだ。私だけならいいけれど、学生たちや数少ない他の術師達を巻き込むわけにはいかなかった。

「……そっちはどうなんですか」

一通りわめいたあと尋ねると、五条先輩はなんだかきょとんとした。一瞬間を置いて笑顔を浮かべる。

「骸骨いっぱいいて飽きないよ」

とさすが夢と思うようなよくわからない答えが返ってきた。
やっぱりただの夢なんだ。本物の五条先輩がどうしているか、知る術は私なんかにはない。そう思うと泣きたくなって、実際少し目が潤んだ。
こんなの意味がない、と一人で嘆く。

「そうでもないって」

ぽんぽんと大きな手が私の肩を叩く。こんなもの何の慰めにもならないはずなのに、何故か少し心が落ち着いた。