清光の指の先はいつでも、きれいに紅く色づいている。
「なんでマニキュアなんかしてんの」と問えば、「かわいいだろ」と自慢げに返ってくるのがいつものことだ。
かわいい、とそのたった四文字の言葉は、性別を越えた装いの理由にも、校則を頑固に破り続ける理由にもなるらしい。
確かに似合っている。男とは思えないしなやかな手に、その紅はよく映えていた。
「……いつからこんなのしてたっけ?」
指先をつつきながら言ったら、私の顔をじっと見つめた。なんとも形容しがたい、微妙な表情をしている。
でも覚えてないのもしょうがない、一緒にいた期間が長すぎて特定できないのだ。小学校にあがったくらいだった気もするし、中学にあがるちょっと前だったような気もする。
それになんだろう。もっと昔からだったような気もした。変な感じだ。
「…………覚えてないならいいんじゃない」
「ええ、いじわるだなあ」
「かわいいからいいの」
「かわいいってすごい……」
「俺かわいいだろ」
「かわいいかわいい」
ゲシュタルト崩壊気味である。でも清光はうんうんと幸せそうに笑った。かわいい。
明確な価値基準があるっていうのはいいことだ。生きやすいかどうかはさておき、自己肯定はしやすくなるだろうから。
「お前のもやってあげよっか。自分じゃ塗れないだろうし」
「聞き捨てならない。これくらいできる」
「ボロボロのへたくそじゃかわいくないよ」
「……やってみなきゃわからん」
「いーやわかる」
昔っからほんっとーに無器用なんだから。
自信満々に言い切って、私の手をとった清光の唇は、緩やかに弧を描いていた。