手入れというのか、手当というのか。
血まで流しているのだから見た目には手当というのが正しいのだろう。だがしかし、人としての血肉を得ようとも、この身はやはり刀であるから、これは手入れと呼ばれるべきだ。
戻るなり手入れ部屋へと乱暴に引っ張られた。
主は長谷部の傷だらけの体を見たときからずっと仏頂面で、いつもより随分手荒に、長谷部の体に触れる。白い指が傷口を強く押す。これが痛みというのだと知ってからは、まだ時が浅い。ぐっ、と唇を噛んで呻くと、主が眉を顰める。
「……痛いのなら痛いと言え」
「いえ。お手数をおかけして、申し訳ありません」
「謝るな」
そう命令されれば、これ以上言葉を重ねることもできなかった。それが長谷部の性質だからだ。
「……長谷部」
手際よく作業をこなしながら、眉間の皺もそのままに主は続けた。
「お前は主命とあらばなんでもこなすのか」
「……ええ」
「では命令だ」
すう、と息を吸った音が聞こえた。よく響く芯のある声が、他の何より力を持って、長谷部の耳に届く。
「折れるな。生きよ。傍にいろ」
三つの命をさらりと下して、手入れの終了を告げる。
呆けたままの忠実な従者に一瞥をくれ、畳を踏みならして、部屋を出ていった。
「……くそ」
仰せのままに、と言いそびれたのは、不覚だった。