物心ついた時には、既に周りに人はなく、私を育て、慈しんでくれたのは人の形をとった神々だった。
少しずつ役目を学び、命を下し、戦わせ、癒し、その繰り返しの終わりは、確実にやってくる。
私は人だ。伸びた背もいつかは曲がり、この身も魂も、朽ちて滅びる。そうしていなくなった後は、またかわりが据えられるのだろう。
「俺は刀で、主は人だ」
いつも身につけている青い衣は、私が幼い頃から何も変わってはいない。私が覚えている限りで、一番美しいと思ったものは、長い時を経てなお、色褪せもせずにそこにいる。
「隔たりは確かにある。いつか形をなくして朽ちるは変わらんが、始まりも終わりも、なにもかも噛み合いはせぬ」
しかし、しかしと、神は続けた。
「俺が人では出会いはなかった」
「主の力がなければこの身は鋼だ」
「隔たりはあるが、これがなくては」
主に触れることもできなんだ。
手つきは優しく、慈しむように哀れむように、私の頬に体温が触れる。
「なあ主。だからこそ俺は、この小さな重なりが愛おしいぞ」
長生きしておくれと、瞳の三日月を細くする。ひとつも忘れずにいようと、約束をしてくれる。
いずれ消えてゆく、儚いものへの触れ方を、この神は知っているのだ。