小さな疑問はいくつもあった。たとえばなぜ、アールが都合よく襲撃の現場にいたのか。散歩へ出て行くのに、どうしてヨナの装備までリュックに詰め込んだのか。私たちにココの危機を知らせたのは誰なのか。なぜあの劣勢から、アールはココたちを逃がせたのか。
その答えはきっと私たちの誰もが知っていて、けれど決して口には出さない。
「アール。アール」
返事は返ってこないのだ。丘の上で風に吹かれながら、独り言のように名前を呼んだ。
「あんまり皆が強いから、私たちも死ぬんだって当たり前のこと、忘れてたよ。あんたが死んで思い出した」
アールは一人で死んだ。
それはどこか知らないところで、敵として生きていてくれることの次にいいことだった。
きっと最期の時に誰か一緒にいたならば、彼は顔を申し訳なさそうに歪めて、ごめんなと謝ったのだろうから。
決定的な言葉を誰も聞いていないから、私たちはココとヨナが助かった結果だけを見て、彼を仲間として葬ることができる。
右手に持っていた花を持ち上げて、白い花びらに唇を寄せた。誰かが置いた花束をよけて、音も立たないくらい静かに、私はそれを石板の上へと置く。
「ココはきっと、あんたの穴を埋めないだろう。……またどこかで。レナート」
私たちみたいな人間がたどり着く場所なんて、みんな一緒に決まっている。最後に行き着いたそこで、きっと、また。