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女性になった/七海

※学生時代
 

朝起きると女の体になっていた。
何の冗談かと思うが、紛れもない現実だ。身長は縮み胸は膨らみ、体のそこかしこが丸みを帯びて、鏡で見る顔つきもいつもより柔らかい。
寮の自室で布団を被って何故こんな事にと考え込んでいると、いつまで経っても出てこないことを不思議がった同級の灰原が部屋に入ってきて、状況を理解した時の悲鳴のような叫びで全てが露見した。

つまり、先輩たちにも。

「な、ななみ……?」

一頻り七海をからかい、遊び、満足したろくでもない先輩たちが、にやにやしながら新しいおもちゃを連れてきた。
あきらである。
女子生徒については同じ建物とはいえ部屋の場所が離れているから、何か騒がしいとは思いつつ原因が七海であることには気づいていなかったらしい。
ソファーに座らされている七海を見つめ、目をこぼれ落ちそうなくらい開いて、「お姉さん?」と首を傾げた。五条が爆笑している。

「七海なんです」

どんよりした空気を纏い、友達思いの灰原が深刻そうに言った。多分今も笑いを堪えている先輩たちと違って本気で心配されている。
厄介な人たちにまで事が知れ渡った原因であることには変わりないが、七海は少し申し訳ない気持ちになった。

「な、七海?ほんとに?」
「本当です」

どうも昨日倒した呪霊が原因らしくて、と説明を続ける灰原の言葉を聞いているのかいないのか、あきらがこちらに近づいてきた。少し顔が青ざめている、どこからどうみても女性の形をしている七海を見て、「マジで?」と呆然と呟く。
視線が不意に下り、「マジで?」ともう一度言った。

「……何がですか」
「いや、七海、これ……」

震える指が差し出された。恐る恐る近づいてくる白い指先が、膨らんだ七海の胸をつんとつつく。驚いて固まる七海のことには気づかない様子で、あきらは「大きい……」と絶望したような表情を浮かべた。

「なにこれ。七海の方が大きいじゃん」
「見るからにな」
「見るからにね」

先輩二人が茶々を入れているが、あきらには聞こえていないらしい。その次に続いた笑い声もだ。先輩たちはヒーヒーといっそ苦しそうなくらい笑っている。

「私いらないじゃん!!」

混乱したまま妙なことに絶望しているあきら、おろおろどうすべきか迷っている灰原、そして笑いの止まる様子がない五条と夏油。地獄のような状況に、七海は思わず青筋の浮く額を押さえた。