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五条と一緒に怒られる

額に青筋をいくつも浮かせた夜蛾から、五条とあきらは何も書いていない板をそれぞれ賜った。首からかけられるよう紐付きだ。それに反省すべき点を書き、夕食まで寮で正座をして晒し者になれという。
ええー!と正座のまま案の定吠えた二人は、無言でぎゅっと力を込められた硬そうな拳を見て一旦口を閉じた。

「お前たちはいい加減に反省するということを学べ」
「日々学んでますけど」
「今回は私悪くない。五条のせいで」
「はあ?最初に術式使ったのはあきらだろ」
「限度って知ってる?」
「あぁん?」
「やめんか!」

罪のなすり付け合いが始まりかけたところに、夜蛾の一喝が響いた。怯むというより不満そうな、似たような表情を教え子二人は返す。
ひとつ咳払いをし、声を落ち着かせた夜蛾が続けた。

「これが嫌なら夕食抜きだ」
「……」
「見張りは呪骸が行うからな。出し抜こうとは考えるなよ」
「……はーい」
「チッ」

去っていく後ろ姿に二人はベロを出したりと子供じみた真似をした。やがて広い背中も見えなくなって、両手にこれ見よがしな赤いグローブを付けた呪骸がぴくりと反応したのに気づき、慌てて支給された板に向き合う。

五条はさっさと『俺は組手に夢中になっていろいろ壊しました』と走り書いた。
真実である。

ほれと寄越されたペンを受け取って、あきらも自分の板にペン先を付ける。私は五条を、とまで書いて少し考えた。

「……煽るってどう書くんだっけ?」
「うわ、バカがいる」
「…………」

貸せよ、と五条が言う。
睨みつけながらも大人しくペンを渡せば、さっきと同じ殴り書きで、煽って物を壊させましたと書ききった。これもまた真実ではあった。
反省の色が見えないあきらが口を尖らせる。

「煽るってだけでよかったのに」
「なんだよ」
「これじゃ私が悪いみたいじゃん!」
「実際悪いだろ」

頭も、と余計な一言を付け加え、再び乱闘かと思われたところで。

パァン、と呪骸が拳を打ち付ける音が響いた。

「…………」
「……やめとくか」
「うん……」

いそいそと崩れかけた正座をし直して、罪の次第を胸に掲げる二人の姿は、普段から少なからず迷惑を被っている他の学生たちのいい見世物になったという。