※夢主は中学生くらいと思ってください
何があってこの子供の機嫌が悪いのか、心当たりはない。
あきらはただ、手についたかすり傷を見て心配しただけだったのに。
「さわんな!」
拒絶の言葉とともに、あきらの手は子供に触れる少し前で止まり、動かなくなった。驚いて見つめた少年は、不思議な色合いの瞳でこちらを睨みつけながら、右手で印を組んでいる。
術式を行使されているのだと理解して、あきらはふつふつと沸き上がる苛立ちに気づいた。
「わかりました」
喉からは存外冷たい声が出た。
「差し出がましい真似をしました」
「…………」
手を引っ込めて頭を深く下げる。顔を上げると、まだ不機嫌そうにこちらを見ている主と目が合い、一層腹が立った。
子供じみていると笑うなら笑えばいい。あきらだって、本来はまだ世話をされる側の年なのだ。不愉快をぶつけて何が悪い。
真顔のあきらが言葉を続ける。
「悟様がそうお望みなら、金輪際触れません」
「……え、」
大きな青い目が見開かれた。苛立ちは何処へやら、戸惑うようにあきらに向かって手が伸びる。
「では、失礼します」
「待って、あきら、」
慌てたように袖を掴んだ手を振り払い、あきらは早足でその場から離れた。追いかけてくる子供が「待って」「ごめんってば」「おこんないで」と次々に言葉を連ねても振り向かない。こけたような音がしたが無視だ。そうしているうちに、声は段々と水気をはらんでいった。
「何があったの?」
すれ違った大人が目を丸くしながら問うた。いつも屋敷の中を我が物顔で走り回っている子供が泣いているのがよほど珍しいのだろう、平然としているあきらと、着物の端を掴んで泣いている子供とを見比べている。
まだ怒りの収まらないあきらが短く答える。
「別に、何も」
温度のない簡潔な言葉を聞いて、もう二度とやんないからと、濁点混じりの必死な声が響いた。