「はい、恵の負け~」
あきらが気の抜けた声で言った。
両腕をそれぞれ呪力で強化した手で掴まれた上、鳩尾に膝を置いて抑え込まれている。
これでは術式を発動できないし、どちらの拘束も解けそうにないので、確かにこれは伏黒の負けだった。
組み手を開始してからこの状態に持ち込まれるまでに、時間はほとんどかかっていない。悔しいことに、今の自分では、あきらはまだまだ勝てない相手なのだ。
「……どいてくださいよ」
不機嫌さを隠さず言ってやると、あきらは何が嬉しいのかにやあと口の端を持ち上げる。
すっとその顔が近づいてきて、伏黒は目を見開いた。
「はい罰~」
頬に柔らかい感触が落ちたと思ったら、そんなことをまた緩い口調で言った。
「罰があるのとないのとじゃ、成長速度がダンチなんだよ」
「誰かの受け売りですか」
「あれ、なんでわかるの。真希がね~、むかし憂太に言って、やってた」
「…………先輩たちが?」
けらけら笑って、あきらが拘束していた手を離し、伏黒の上から退く。
むくりと身を起こしながら、そういうのは罰とは言わないんですよと教えてやるか、あの二人はそういう関係なのかと尋ねるか、少し迷っている伏黒だった。