姉様が愛でているのは家族という雇用関係でしょう、と少年は言った。目の前で繰り広げられる姉弟愛にどうも戸惑いを覚えるのは、自分に兄弟がいなかったせいだろうか。とりあえずどうしようかと、もう一人居合わせている高遠あきらを困った顔で見る。
あきらは悠仁の視線に気づくと、安心させるようにひとつ頷く。そして至極真剣な顔で、ぴっと勢いよく片手を上げた。
「冥さん」
その声音はやはり真剣なものである。
なんだい、と弟を愛でる手を止めた冥が尋ねた。あきらはこほんと咳払いをし、先ほど呼びかけたのと同じ真剣さを以て口を開く。
現状の打開になるかと自然と期待を募らせながら、悠仁はあきらの言葉の先を待った。
「一つ質問なんですけど」
「いいよ。言ってごらん」
「恋人という雇用関係についてはどう思われますか?」
「え?」
予想外の問い掛けについ声を上げると、さきほどあんなに安心感を覚えたはずの相手は、なにか間違っていますかとでも言いたげな顔で、悠仁の方をきょとんと見つめてきた。