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悠仁にびっくりする

あきらが虎杖悠仁という少年に出会ったのは、彼がまだ死んでいた時のことだった。
一つ上の困った先輩に僕の生徒同行させてほしいんだよねーっと軽いノリで頼まれて、渋々出向いた先に、両面宿儺の器でありつい先日任務中に死んだと報告が上がっていた悠仁が立っていたのだ。

思わず二度見した。

そして五条を見て、はい?と首を傾げると、彼は学生の時とあまり変わらない笑い方で、ハイいってらっしゃい!と嬉しげに伊地知の運転する車にあきらと悠仁を押し込んだ。車の中では眉尻を下げた伊地知がご愁傷様ですというような顔をしていて、あきらは久しぶりに「あ、巻き込まれたな」と高専時代のあれこれを思い出して遠い目をした。

とはいえ悠仁はいい子だった。
まだ呪術については学び始めたばかりということで、フォローが必要な場面もあったが、飲み込みも勘も並外れていいことはすぐにわかる。多少フランクではあったが、年上に対する礼儀もよく弁えているから不快感はない。
これからもっと成長していくだろうなーとあきらは素直に微笑ましく思った。子供の成長は嬉しい。五条が教職を楽しんでいる理由も、少しは理解できるというものだ。

そう、強くなるとはその時から思っていたのだ。
思っていたのだが。

 

「え、えぇ?」

数ヶ月ぶりに虎杖悠仁を目の前にしたあきらは存分に混乱していた。今日は確か推薦者の任務同行を申し渡されていたはずで、なのに待ち合わせの場所に立っていたのは悠仁だ。ついこの間まで、呪力の扱いもぎこちなかった虎杖悠仁が、あきらの様子にぱちぱちと瞬きをして首を傾げている。

「どったのあきらさん」
「どったのじゃないよ」

あきらは意識して悠仁を見た。体を包む呪力の流れはこの間が嘘のように凪いでいて、歴戦の呪術師に引けを取らない。これだけ見ればあきらと比べたって遜色はないだろう。
あきらだって推薦者の査定をする側の立場だ。だからこれはあきらが劣っているのではなく、悠仁があきらのステージにまで上がってきている。この短期間で。

「え、強くなったよね?強くなってるよね!?」

君こそどうしたの!?と声を上げると、悠仁はちょっと頬を染めて照れながらポリポリと頭をかいた。「色々ありまして」と口を開く。

「…………」

呪術師にとっての色々なんてみんな似たようなことだ。あきらにも覚えはある。やっと少し落ち着いて、あきらは悠仁を見た。

「強くなるって決めたんだ。だからあきらさんから見て前より強くなってるなら、嬉しい」

えへへと笑う少年に何があったのかはわからない。だがそれなら、望む通りどこまでも強くなってくれたらと思う。
急いで大人にならなくたっていいと、言ってあげられるような世界には、お互い生きていないから。