かわいい後輩である伏黒恵が、つい先ほどまで死んだことになっていた宿儺の器を称して、呪力なしなら京都含めてもこいつが勝ちますと言うものだから、あきらは俄然興味を持った。
気になると確かめずにはいられない質なので、一回だけ組み手をお願いする。もうすぐ団体戦が始まるというのに何をやっているんだと言われそうなものだが、虎杖悠仁がどんなものか、二年生は全く知らないのだ。一度くらい戦い方を見ても損はないということで、あきらと悠仁の組み手は案外あっさり許された。
「……おお」
結果は後輩の言ったとおり、虎杖の勝ちである。
速さはあきらの方が勝っていたけれど、虎杖は何より勘がいい。少々の素早さでは追いつけず、力でも劣っているあきらはすぐに体を抑え込まれて動けなくなった。術式はなしの約束だから、これ以上打つ手もない。
「うーん、こういう負け方、ひさしぶり」
驚きを込めてあきらが言うと、たった今あきらの後輩となった虎杖が、びっくりした、というようなことを言って息を吐いた。
「えっと、もういい?先輩」
「うん、いいよー」
「痛くねえ?」
「大丈夫」
解放されてそのまま立ち上がり、制服に付いた土を払う。お互い強いねえとか先輩は速すぎとか言い合っているところに、見ていたパンダから茶々が入った。
「バカだな悠仁、負けたら罰としてキスしてもらえたぞ」
「え!!?」
真希も意地悪げに笑って、伏黒を見た。
「あー、そうだよなぁ恵。勿体ねえ」
しゃけしゃけ、そうねいつもしてもらってるものねと、悪ノリした狗巻と野薔薇が続く。
「えっ、伏黒、何してんの!?」
「…………」
「それ罰じゃなくてご褒美だよな!!?」
問いかけられた伏黒はというと、ふいとそっぽを向いて、返事を拒否している。
混乱している悠仁を見ながら、ご褒美になるのであれば、虎杖にキスしといた方がいいのかなあと、空気を読めないあきらは思った。