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怖い五条

どうしてよりによって自分が同行した時にこんなことが起こるのだろう。高専の同僚からの電話に五条から少し離れて対応したあきらは、重苦しい表情で携帯の真っ暗な画面を見つめた。最早ため息も出てこない。

顔を強張らせて戻ったあきらに、公園のベンチに尊大に腰掛けて鳩の群れを眺めていた五条が、サングラスの奥から青い双眸を向けた。

「死にそうな顔してるけどどうしたのさ。腹でも壊した?」
「五条さん、」

首を横に振り、あきらは深刻な表情で口を開く。
——言わないという選択肢は、当然ながらない。

「……その、虎杖くんが……亡くなったとの連絡が」

ぞわっ、と寒気を感じた。

七月の、もう夏とも言える気温の中で、体がカタカタと震え出す。
周りに群れていた鳩が、木の上で休んでいたらしい鳥たちが凄まじい羽音を立ててどこか遠くへ飛び去っていく。およそ生き物の見当たらなくなったそこで、あきらは一人、五条と取り残された。

命の危機だと、あきらの体は訴えている。

逃げ出したくて震える足をなんとか抑えて、唇を引き結び、表情の消えた五条の顔を見た。

「続けて」

ただ一言、命令が下る。
いつものふざけた様子など欠片もない五条の声音に、はいと答えるあきらの声は、どうしようもなく震えていた。