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順平と勉強してない

※もしも

 

ねえ順平、クラゲ出してよー、とベッドに寝ころんだあきらが言った。

数十分前は少なくとも順平の向かいに座って課題のプリントとにらめっこしていたし、数分前はちょっとだけだからと言い訳をしてベッドに突っ伏すまでにとどめていたのに、あっという間に完全にやる気をなくしている。

順平ははあ、と大きくため息をついてから、「澱月だよ」といつまで経っても覚えてもらえない自分の式神の名前を教えた。

「んー、じゃあおりづきちゃん、出してー」

また覚える気のなさそうな、ひらがなの発音が聞こえて、本日二回目のため息をつく。

そっと手に持っていたシャーペンを置いて、そのまま印を組む。背後から現れた気配は瞬く間に海月のような形をとって、あきらの元へ向かっていく。
自分の頭と同じくらいの大きさの澱月を見て、何が楽しいのか、あきらはわははと喜んでいる。

「満足したら課題の続きだからね」
「気が向いたらね!」
「……」

無言のまま、順平はふよふよ浮かぶ澱月のサイズを一回り大きくして、あきらの顔の上に落とした。

「うわあっ!!?」

顔の上で蠢く触手に驚いたあきらの悲鳴が、寮の部屋に大きく響く。それを聞いて少しだけ気が晴れた順平だった。