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勘違いする五条

※学生時代

 

あきらは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の先輩に一発お見舞いしてやらねばならぬと決意した。あきらはただの後輩である。あきらは大した術師ではない。けれども度重なるからかいと実害に対しては、もう一ミリも我慢できなかった。

休日である。

休日であるというのに、あきらはわざわざ高専の制服に着替え、精神を落ち着けて愛用の脇差の手入れをしていた。なんだかんだ一番気合いの入る格好なのだ。今まで言われた言葉、今まで犠牲になったおやつ、借りパクされているマンガなど次々に頭を巡る雑音をなんとか振り払い、乾いた布で刃を拭う。明かりに反射してぎらりと光ったそれを見て、美しいと、それだけを感じたところで、頃合いだろうと刀を置いた。
心は凪いでいる(ある程度)。

「……」

あきらはポケットに入れていた携帯電話を取り出すと、ぽちぽちとメールを打った。相手は勿論打ち倒すべき先輩、五条悟であり、文面もしっかり決まっている。

『今日の五時、練習場まで来てください』

絵文字も何もないが、ちゃんと丁寧語を使っていることだけでも誉めてほしい。
しばらくすると『わかった』と短い返事があって、あきらは満足げに微笑んだ。

「絶対一撃入れてやる……」

地の底から這うような低い声が部屋に響く。約束を取り付けた時間まであと一時間ほど。先についておいて、何か罠でもしかけた方がいいだろうか。ふふふ、と不気味な笑いを漏らしながら、あきらは立ち上がった。
 

**
 

午後五時。約束の時間に、五条はちゃんとやってきた。
鼻歌を歌って陽気に現れた五条に少しイラッとしつつ、あきらは来てくれてありがとうございます、と頭を下げる。

「別にいいけど」

と五条が上機嫌に答えた。

「で、何なわけ」
「…………」

ニヤニヤとやけに嬉しそうな顔をされて余計にイラッとした。いつも最強最強とうるさいこの先輩のことだから、あきらが無謀にも正面から向かってきたのが面白くて仕方ないのだろう。この野郎、目にもの見せてやるからなと口汚く内心で罵りつつ、あきらは至って冷静に背中のホルスターに手を遣った。
脇差しを抜いて構えると、五条が青い目を丸くして、「は?」と言った。

「構えてください」
「は、いや、はあ?何してんだよ?」

ちょっと困惑気味の五条を訝しげに見て、「何がって決闘ですけど?」とあきらは武器を構えたまま冷たく言う。五条は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして、一瞬動きを止めた。それからは?とか嘘だろとかぶつぶつ言っている。信じられないようなものを見るような目であきらを見た。

「オマエな、紛らわしいんだよ!!」
「何のことか全然解りません。もう始めていいですか?」
「あーもう!!」

ヤケクソ気味な五条が片足を後ろに引いた。整った顔であきらを睨んで、「覚悟しとけよ」と恨みがましい声で言う。それはこっちの台詞なんだよと思いながら、まずは一歩を踏み込んだ。