「おっあきら、ナイスタイミング」
高専内をブラブラ一人で歩いていると、上機嫌な五条悟なんていう、機嫌の悪い五条悟と同じくらいヤバい人物に見つかってしまった。一昨日くらいに仙台に行ったと聞いていたが、もう帰ってきていたらしい。
ふんふん楽しげな去年の担任はちょいちょいとあきらを手招きしてくる。「いいもん見せたげるからおいで」と付け加えた。
「えぇ……」
五条の言ういいものが、生徒であるあきらたちにとっていいものだった試しは、知り合ってこの方ない。
当然しばらく渋っていたが、五条が諦める気配はないし、一応教師だし恩もあるし世話にもなっている相手だし。
義理堅いあきらは結局五条の元に向かった。渋々である。
「どうしたんですか」
「うん、ホラこれ、見てみな」
ハイッと向けられた携帯の画面を覗き込む。
画面の中にいたのは伏黒恵だった。コンクリートの上に座り込んで、そこここに血やら打撲の痕がある一つ下の後輩は満身創痍で、それでも少しだけ余裕のある嫌そうな顔でカメラを睨みあげている。
痛そうだ。わざわざこんなところ撮らなくたっていいのに。
本人だってきっと嫌がっただろう。
「面白いでしょ?」
五条もあきらの身長に合わせながら画面を覗き込んできた。この人ほんと顔がいちいち近いんだよなぁと距離感に呆れながら体を少し引く。
非難がましい視線を去年の担任に投げて、「どこがですか」と言った。
「えー?」
「むしろなんで私がこれ面白がると思ったんですか」
弱った後輩を見て喜ぶような、そんなに趣味の悪い人間だと思われているなら心外だ。
じろりと睨むと、本当によくわかっていないらしい五条が、首を少し傾けてポリポリと頬をかいた。
「後輩ボロボロなのって愉快なもんじゃないの?」
「うっわ……」
一歩引いて顔を引きつらせるあきらを見て、五条がんん?と首を傾げる。
この人の後輩ってどんな毎日を過ごしてたんだろうな、とあまり答えを知りたくならない疑問があきらの頭を過った。