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七海の姪っ子

姉の子をしばらく預かることになった。
海外で少し長い仕事をすることになったと姉から連絡を受けたとき、七海は姉という存在のクソさを久しぶりに思い出して悪態をついたものだが、なかなかどうして、血の繋がった子供というのはかわいらしい。
あきらは基本的にいい子だった。
わがままも言わないし、自分のことはある程度自分でやろうとする気概もある。いったいどうして姉からこの子供が生まれてきたのかと思うくらいには、できた子供だ。

だがしかし。
やはり子供というのは、不可解な生き物である。

「あのね、あきらね、おおきくなったらさとるくんとけっこんする!」
「あきら」

一体何が琴線に引っかかったのか、柔らかい頬を紅潮させて、恥ずかしがるようにあきらが言い、あきらを抱き上げる黒尽くめの男は軽薄にマジで?アハハと笑っている。
思わず窘めるように名前を呼ぶと、七海の困った先輩であり困った人間であるところの五条悟と、あきらが揃ってきょとんと七海を見た。言うまでもないが、五条の方はわざとそうしている。
よりによってこの人のいる高専に連れてきたのが間違いだったと、七海建人は数時間前の自分の判断を呪った。

上層部、それから一部呪術師には蛇蝎のように嫌われている五条悟だが、子供受けはいいのだ。
多分振る舞いが近いからだろうと、本人が聞いたらドスの利いた声で責め立てそうなことを七海は思っている。
「七海の姪?へえ名前は?」「あのねー、あきら」「あきらちゃん、かわいいねえ。僕はね、五条悟だよ」「さとるくん?」「そうそう。おかし食べる?」「たべる!」「だっこしてあげようか」「うん!」
出会ってから交わしたそんな少しの会話で、抱き上げられたあきらは目をきらきらさせて結婚すると言い出した。何故だ。
年齢を考えれば微笑ましいものかもしれないが、五条悟が親類になるなど、七海には想像ですら耐え難かったのだ。

「五条さん、あきらをこっちに」
「え~、なんで」
「その子の保護者は私です」

手っ取り早く引き離そうとしたが、五条は渋るし、あきらはぎゅっと五条の黒い服を小さな手で握りしめていて、離れないぞと言わんばかりだった。思わず大きな溜息が出る。

「さとるくん、あきらとけっこんしてくれる?」
「ん~、そうだなあ」

必死なあきらの問いかけに、五条が薄い唇の端をくっと持ち上げる。

「あきらちゃんがとびっきりの美人さんになって」
「うん」
「大人になっても僕のことが好きで」
「うん!」
「で、その時僕が死んでなかったら、結婚してあげる」
「……?」
「五条さん」

最後の条件を聞いた姪っ子の頭上にわかりやすく疑問符が浮かんだ。今度は五条の方を窘めるために、七海が名前を呼んだ。

「別に、冗談なんだけど」
「嫌な冗談でした」

心配しなくてもあと百年は生きるって、とふざけたことを言いながら五条が笑う。ねー、と同意を求めるついでに頬ずりされたあきらが、きゃあきゃあ楽しそうな声をあげていた。