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草むしりする五条

※学生時代

 

高専の敷地の片隅、雑草むしりの手をはたと止めて、少し離れたところでしゃがんでいた五条が唐突に口を開いた。

「要は草がなくなればいいんだよな?」

嫌な予感がしつつ、まあそうだけど、とあきらは頷く。整った顔面をぐるんとこちらに向けて、じゃあ、と先が続いた。

「術式使っていい?蒼」
「却下」

何がじゃあだ。
蒼というのはこの規格外の少年が身のうちに持っている力のひとつで、出力によっては災害のような結果をもたらすことをあきらはよく知っている。ていうか、と呆れた顔を五条に向けた。

「それが原因でこうなってたんじゃなかったっけ」
「それはそれ、これはこれ」

なにがだ。

数年ほったらかしにされた花壇の跡地のような場所で、五条とあきらは並んで雑草を毟っている。

花を植えたいからと自主的に動いたのはあきらで、五条は罰則がわりに手伝いを命じられただけの人間だった。
なんでも実習に向かった先で、呪霊ごと建物を盛大に壊してきたらしい。大して反省の色もなさそうな五条の首根っこを掴み長い足を引き摺りながらやってきた、元担任の眉間の皺の深さをあきらは思い出す。

役に立つかはわからんが、と差し出された張本人は、地味な作業が元々あまり好きではないのだろう、一時間もしないうちに言葉通り役立たずになりかけている。

溜息が出た。

「坊っちゃん育ちはこれだから……」
「……はあ?」
「根性なくて困るわ。夏油ならもうちょっと頑張るんだろうな」
「んだと?」

わかりやすくピキッと青筋を立てて、五条が苛立った。

「……別に俺だってできるっつの」

あきらの目論見通り、一般出の親友と比較されてむっとした五条は、大きな体を丸めて草むしりを再開した。
力こそ飛び抜けているが、精神的にはまだまだ子供である。誘導に成功したあきらが機嫌良く笑った。

「終わったらジュース奢ってあげるからね」
「割りに合わねー!!」

喚きつつも地道に草を抜いていく後輩の姿を眺め、うんうんと頷いたあきらであった。