真希と真依の小学校の入学式に、二人の両親は来なかった。何かにつけ世話を焼いてくれる使用人の一人が、どこから引っ張り出したのかそれなりの着物を着てやってきただけだ。
禪院の術式を持たない二人の家での立場を考えれば特に不思議なことでもないし、使用人とはいえ血は繋がっているから、二人と彼の面差しはよく似ている。そのせいか悪目立ちもしなかった。それでもじろじろと──特に女性から──よく見られているのは、そこそこ様になった着こなしと、彼自身の容貌のせいだろう。
入学式、と大きく書かれた立て板の前に立ち、もうちょっと寄れだの笑えだの指示を出している禪院智に、真希と真依はしらけたような表情を向けた。
「記念写真なんだぞ!」
最近買ったらしいデジタルカメラを構えながら、智が怒ったように言う。
「ちょっとは嬉しそうにしろ!」
「嬉しいこともないのに笑えないわ」
「右に同じ」
「お前らなあ……」
そっぽを向いた二人に、智が深く息を吐く。しかしいつまでもその場所を独占しているわけにもいかないし、撮らないよりは撮った方がマシだろうと思ったらしく、そのまま適当にフラッシュを焚いた。
はー、ともう一度大袈裟に息を吐いた智に、後ろからあの、と声がかかる。順番を待っていた父兄だ。
「げっ、すみません、すぐ退きますので」
智が頭を下げて退こうとすると、くすくす笑った母親らしき人が、いえ、と返す。それから続けて口を開いた。
「もし良かったら、お写真撮りましょうか」
「え」
「折角ですし。お子さん達もそちらの方が嬉しいと思いますよ」
「で、でも」
「私たちの分も後から撮っていただけるとありがたいです」
「そ、それは全然」
いいんですけど、と戸惑っている智の手から、ひょいとカメラが取られた。うちと同じ機種ですね、と言いながら促された智はよろけたように一歩を踏み出す。
そして吹っ切れたように、成り行きを見守っていた真希と真依に向かってうおおと走り寄る。二人は咄嗟に逃げようとしたが、智は何故かいつもより素早く、二人を捕まえて逃げられないよう抱き上げた。
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「よく撮れてんなあ」
「……」
現像した写真を眺めて、満足げに笑う智を双子は無言で見た。
二人の反応を気にも留めず、智は鼻歌を歌いながら、畳の上に置いたアルバムに写真をペタリと貼りつける。
なんとも言えない顔で黙り込む真希と真依に気づくと、智は軽く笑って、二人の頭をガシガシと乱暴に撫でた。