※高専卒業後大学に編入している硝子さん
※夏油の離反などなかった
大学の空き教室。
後ろの席に座って次の授業の小テストの勉強を黙々とやっていたあきらが、いきなりううと呻いて机に突っ伏した。
なんだなんだ、と読んでいた雑誌から目を離して、家入はあきらの丸い頭に視線を移す。あきらはぽつりと、
「彼氏ほしい」
と言った。
そのままうんともすんとも言わなくなった数少ない友人のつむじをつつき、硝子は「作ればいいじゃん」と言う。
「そんな簡単にできるなら苦労しない」
少しくぐもった、恨めしげな声だった。
曰く中高と校則の厳しい女子校に通っていたあきらは今までに出会いもなく、サークルにはあれこれ迷っているうちに入り損ね、バイトは今のところしておらず、学部の男子はちょっと趣味じゃない、のだという。
何にしろあまりそっち方面に興味がない硝子にはわからない心境だった。ふうん、とついどうでもよさそうな相槌が出て、やっと顔を見せたあきらにぎろりと睨まれる。
「……硝子って共学出身だったよね」
「まあそうだけど」
呪術高専への入学に性別の制限はないから、間違ってはいない。ただ人数があまりに少ないため、学年によっては男子だけだったり女子だけだったりするのだが。
「なんかいい感じの人いない?紹介してよ」
どうしていきなりそんな気分になったのかはわからないが、今日のあきらは随分切羽詰まっている。ちょっと怖いくらいの笑顔でずいっと近づいてきたので、硝子はその分顔を引いた。
そのままうーんと宙を見つめて、同期の男二人を思い出す。真っ先に浮かぶのは何かを企んでいるときの胡散臭い笑顔だ。女子からの評判は硝子の知る限りよろしくなく、かく言う硝子だって二人のことを問われたら迷わずクズと答える。
「んー……」
──あれを紹介してもいいものだろうか。
後で文句を言われそうな気がする、と思う間にもあきらはお願いと言い募った。仕舞いにはうーっと唸って、仕方ない、と肩を落とす。強い決意の篭った眼差しで、硝子に向かって指を一本立てた。
「1カートンでどう」
「オッケー。乗った」
「よーし!」
まあいいや。ダメだったらその時はその時だ。
目先の利益につられ、硝子はすっぱりと考えを切り替える。ひょっとするとあいつらにも文句は言われるかもしれないが、在学の数年間で貸しなんて山ほどあるはずだから嫌と言わせるつもりはない。
となると次に決めるのは二人のうちどちらをあきらに紹介するかということで、硝子は少し考えてから、やっぱりここは本人に決めて貰おう、と思った。
「ねーあきら」
やったー、と無邪気に喜んでいるあきらに声を掛ける。なぁに、と機嫌よく振り向いた。
「白いのと黒いのどっちがいい?」
「はい?何が?」
あきらの頭の上に疑問符が浮かぶ。いいからと硝子が急かすと、小首を傾げて、じゃあ白で、とあきらは答えた。