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137話

※137話の情報のみで好き勝手書いてます

 

あの部屋は腐臭がする。この期に及んで自分たちのこれからの安全、そして利益しか考えていない老人たちが発する腐臭だ。耐え難いことこの上ない。

退室を許され部屋を出て、蝋燭の灯る廊下を乙骨と二人で歩いた。言われたことを頭の中で反芻しながら、足早に進む。
そこを抜けたとて人が減り気配のない呪術高専はいつもより薄暗く、嫌になるくらい静かで、まるで今の東京の現状そのものだ。

「……五条先生は取り返すよね?」

神経を尖らせ、辺りに何の見張りも小細工もないことを確認してからあきらが口を開いた。ぎりぎり隣の乙骨にしか聞こえないくらいの声量である。唇もほとんど動かしていない。念のためだ。
「うん」乙骨が迷いなく頷いた。

「封印も、解けるなら解こう。僕達で駄目なら解ける人を探す」

続いた言葉にこちらも頷く。異論はない。普段からめちゃくちゃで腹が立つことも死ねばいいと思うことも山ほどあるが、あれでいて五条悟は必要な人間なのだ。あんな老人たちよりもっと。永久追放なんて冗談じゃない。とっとと戻ってきて貰って、それが問題になるようなら、消えるのは罪を定めた老人たちの方だ。優先順位ははっきりしている、全てに従う気などさらさらない。

「夜蛾学長」
「勿論、処刑なんてさせない。早めに接触できるといいんだけど」
「学校にある呪骸でなんとか連絡つかないかな」
「学長が気づいてくれたらいけるかもね」

こちらも方針に相違はないようだ。またひとつ安心して肩の力を抜く。「あと」といくらか気の抜けた口調で切り出したあきらを遮るように、

「虎杖悠仁は」

乙骨が言った。その目はあきらを見ていない。じっと前を見据えている。

「さっきも言った通り、僕が殺す」

ピリ、と空気がひりついた。唾を飲んで少し喉を潤してから、あきらが口を開く。

「……危険なのは悠仁じゃなくて、宿儺だよ」
「同じことだよ」
「違う」
「違わない。言っておくけど、この件で目が曇ってるのは、僕じゃなくてあきらさんだ」

否定できなかった。けれど虎杖悠仁という、屈託なく笑う後輩と過ごしたわずかな時間が、このまま引き下がることを許さない。

「……あんただって」

いくらかトーンの下がった声とともに乙骨を睨む。

「あんただって、狗巻の腕のことがなかったら、もう少し迷ってたはずでしょ」

結局お互い様なのだ。
待っても返る声はなく、それは紛れもない肯定だった。