※十年くらい前
※138話の情報のみ
「真希ちゃん、真依ちゃん、かわいく助けてって言うたら助けたるよ」
嫌なところに出会した。
遊びに出かけて帰ってこない妹分を探し、二人がよく遊び場にしている社のそばに来たらこれだ。木の陰にでたらめな言葉を呟く呪霊、少し離れ、寄り添って固まる探していた双子。それから。
「どうしたん?簡単やろ?」
二人を見つめて、蛇のような目で微笑む少年。
──禪院直哉。
あきらたちと異なり才を持つ、禪院の誇る呪術師が、強者の笑みを浮かべている。柵に腰掛け、幼い子供二人を眺めて首を傾げた。
呪霊と少年、警戒すべきがどちらなのかは二人もわかっているようで、真希が真依を庇うように前に立つ。おや、と少し驚いた風に目を大きくした後、直哉はくすくすと笑い出した。
この状況はよくない。
双子の側に付くのなら、割り込む以外の選択肢はないだろう。
「……」
息を吐き、腹を決めたあきらが指を鳴らす。その瞬間、木の陰にいた呪霊が火に包まれた。
当然こちらにバッと視線が集まる。
「あきら姉!」
安心したのか、真依が今にも泣きそうな声を上げる。あきらは応えるようににっこり笑い、二人に向かってひらひらと手を振った。
「真希、真依。ご飯の時間だから、早く戻りな」
「でも……」
「いいから」
「わかった。真依、行くぞ」
「お姉ちゃん……」
脅えたような真依の手を真希が取った。直哉を一瞥してから、あきらの方へと走り寄る。すれ違いざまに大きな瞳で見上げてきたので、うん、と頷いてやると、真希と真依はそのまま屋敷の方向へと駆けていった。
残されたのは当然、あきらと直哉の二人だ。
「あーあ」
直哉が口を尖らせた。つまらなさそうに言う。
「せっかく躾たろうと思ったんに。なんで邪魔すんの、あきらちゃん」
「不必要だと思ったからです」
声は自然と固くなったが、直哉の方にそれを気にした様子はない。
「そんなことないって。女で、しかもポンコツ──今のうちにちゃーんと立場教えたるんがあの子らのためや。わかるやろ?」
諭すように言う直哉は、あきらたちのことを当たり前に蔑んでいる。相伝の術式を持たず、この家に落ちこぼれとして生まれ、それでも人として生きたいともがくあきらの心を、バカみたいだと笑っているのだ。
「小さい頃からきっちり折ったらな。どうせ何にもなれんのやから、夢持たせたらかわいそうやん。なあ?」
言い聞かせるような口調が不快だ。ぎゅっと噛みしめた唇を見て、満足そうな笑みを直哉は浮かべた。