最近七海サン七海サンとはしゃいでいる猪野に高専時代の七海について聞かれたので、ふと昔のアルバムあるよ、とこぼしたら、当たり前に見たいです!と言われてしまった。
もちろんあるとは言っても、卒業の少し前に硝子と二人でなんとなくまとめたものだし、七海とは学年が違うので刺身のツマみたいな扱いだ。それでも見たいと引く気がない猪野を待機室に置いて、あきらは昔の担任、夜蛾のいるだろう事務室へと向かった。作ったはいいがなくしてしまいそうだからと卒業の時に預けていたのである。
「お、あきらじゃん。なんか用?」
事務室兼職員室には事務の仕事なんて全くしていなさそうな五条が寛いでいるだけだった。特に答えず、あきらは勝手に棚を漁る。
目的のものはすぐ見つかった。
問題は中身だ。七海のいる写真はあるだろうか。少し古びたアルバムを、確認のため開くと、あまり触る者がいないからだろう、劣化したビニールがペリペリと軽い音を立てた。
「僕のこと無視してなに見てんの?」
「うるさい。どっか行って」
「最初からいたのは僕です〜あきらがどっか行けば」
言いながら五条は大股であきらのそばまでやってきた。あきらの手の中にあるアルバムに視線をやって、口を閉じる。少し間を置いて「こんなのあったんだ」と言った。
「……昔硝子と作った」
「ふーん」
「見たかったら見れば」
猪野の後でになるけど、と付け加える。
返事をしない五条をちらりと見上げてから、あきらは改めてアルバムに視線を落とした。
──何を見ているかなんて、考えなくてもわかる。
一年から五年まで、それなりの数撮った写真を、説明の文字もなく貼っていっただけのそっけないアルバム。
懐かしい制服を着た五条、硝子、あきらと並んで、そこには今はもういない、どこかの誰かの笑顔があった。