※学生時代
呪術実習に連れて行かれるようになったのは、中学三年生になって半年が過ぎた頃だった。高専に入学が決まり、現一年だとかいうめちゃくちゃな先輩達に引き合わされたあきらは、その中の一人である五条の慣れといて損はねぇだろという一言で付き添いのもと結構な頻度で仕事に連れ出されるようになっていた。
先立つものができるのはありがたかったし、どうせ一年後には高専に入学して同じようなことをやるのだし、ついでにあきらは所謂不登校というやつで、中学にほとんど通っていなかったから都合はいい。多少強引だとは思ったが、文句は特になかった。
何度目かの実習の時である。
「術師はさ、ある程度イカレてねぇとできねぇの」
唐突な話しぶりだった。支給された呪具で目の前の一体を薙ぎ祓い、近くに寄ってきたあきらを見て、五条は言った。
一瞬きょとんとしたあきらだったが、すぐにああ、と頷く。
「確かにイカレてますもんね、五条先輩」
「…………」
「いった!!」
無言でデコピンされた額を押さえ悶絶していると、五条が呆れたように溜息を吐く。「オマエは心配なさそーだな」と続けた。
「私はイカレてるつもりないですけど!?」
「その割には呪霊相手に躊躇ねぇし」
「いや、だって」
「あんなのでも一応生き物って見なして、おかしくなるやつはたまにいんだよ」
「……」
今さっき祓った呪霊を思い出してみる。芋虫と人間が間違って融合したような奇妙な呪いだった。見ているだけで嫌悪感を催すような。
「別に……」
語尾が少し小さくなった。
「呪霊が犬猫みたいにかわいくなくてよかったって、思うときはありますけど……」
多分それなら今ほどは思い切りよく向かっていけないと思う。
呪霊が生き物だなんて、今までそういう風に考えたことがなかったあきらは、少し混乱している。
呪霊はただ人を害するためだけに蠢くものであって、言葉を発しはしてもそれはただの雑音で。生き物と言うよりは、そういう仕組みのモノとしてしか見ていなかった。
「呪術師やるなら」
眉根を寄せて考え込むあきらを見下ろして、なんでもないような口調で五条が言う。
「いつか、呪霊以外も殺す日が来る」
それまでにきっちりイカレとけよ、と続けた先輩は、あきらの頭にぽんと大きな手を乗せたかと思うと、出口の方へと歩き出していた。