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手を繋ぎたくない五条

※学生時代
※付き合いたての二人です

 

実習のない午後は、先輩達に見てもらって体術の訓練をすることが多い。
今も少し向こうでは、夏の日差しの中、夏油と灰原・七海のペアが組み手をして動き回っている。一応試合形式なので、帽子を被った家入が審判についていた。
休憩中のあきらは木陰に体育座りをしてそれを眺めながら、隣の五条にちらっと目をやる。
あきらの視線になんて気づかずに、五条はゆったりと胡座をかいて、ごくっと気持ちの良い音を立ててペットボトルの水を煽る。喉仏が動く。
ちょっと水滴に濡れた五条の手が、やけに目立って見えた。

「五条先輩」
「ん?」
「手、繋いでもいいですか」

うだる夏の暑さのせいか、それとも仮にも付き合いたての浮かれた頭のせいか、あきらはそんなことを言った。五条ははあ?と驚いた顔で突拍子のないことを言い出した後輩を見、それから目を合わせるつもりのないあきらに気づくと、ちょっと不機嫌そうに視線を正面に戻した。

「……やだよ」

返ってきたのはとても付き合っているとは思えない拒絶の言葉で、あきらはむっとした顔で五条の横顔を見る。今度視線を合わせないのは五条の方で、決着がついた様子の同期達がこちらに向かってくるのを見ながら、「今はムリ」と付け加えた。真顔を装っているのはわかっている。照れているときに真顔を作ったり不機嫌になったりするのは、五条の癖だ。

「……私たち付き合ってますよね?」
「付き合ってるけど」
「五条先輩が私のこと好きって言いましたよね?」
「……そーだけど!」

後でいいだろ!と小声で、しかし勢いを込めて五条が言う間にも、休憩を取ることにしたらしい四人はこちらに近づいてくる。夏油がひらりと片手をあげて合図をしてきた。
それに応えてこちらも手をあげた五条にますます不機嫌になったあきらは、普段通りの声の大きさで言った。

「わかりましたじゃあ別れます」
「はあ!!?」
「恥ずかしいからって彼女と手を繋げない彼氏に存在価値ってあります?」

五条があげた大声を聞いた四人が顔を見合わせる。その中でも察しのいい七海がすごく嫌そうな顔をしたのを見つつ、あきらはしれっと続けた。

「そんな彼氏に付き合って青春を無駄にしてる暇、ないので。学生時代はあっという間なので。五条先輩とは残念ですが今日でお別れして私は新しい彼氏を見つけます。手近なところで七海とか」
「オマエな……」
「灰原でもいいですよ。夏油先輩は気まずいだろうからやめておいてあげます。慈悲です」
「…………」

五条はすっかりこちらへ近づいてくる同期達への注意力を失って、あきらがさっきしていたようなむーっとした顔であきらを見下ろしている。
あきらの方は涼しい顔で正面を見ていた。
どこまで冗談のつもりかがわからない。選択肢として七海や灰原を持ち出してきたのはただのノリだとしても、別れる云々はありえない話ではなかった。あきらの言う通り、好きだ付き合えと言ったのは五条の方で、立場は当然こちらの方が弱いのだ。

はー、と大きなため息を五条が吐いた。

そして大きな手が、白い膝の上に乗ったあきらの手を掴む。

「…………これでいいんだろ」

不機嫌そうに五条が言ったちょうどその時、すぐそこに迫っていた家入がにやにやと笑いながら、「よくわかんないけどあきらの勝ちっぽい」と頼んでもいない審判を下してくれた。
 

ひとこと
ポルノグラフィティのラビュー・ラビュー聞いてて五条こういうことやりそうと思ったんですけど、夢主が可愛い彼女になりませんでした。いろいろ違うのでおこがましい。