パンダはほんとうはパンダではないらしい。
怒ったりピンチに陥ったりすると、ムキムキッとしたゴリラモードとなって、目に映るすべてを破壊し尽くすのだと、パンダはいかにも恐ろしげに(冗談っぽいとも言う)両隣に座る棘とあきらに話してみせた。
「それはたいへんだぁー……」
「しゃけ……」
対する二人の返事は鈍い。発音もなんだか幼くなっている。
何を隠そう、眠いのだ。
昼ご飯をお腹いっぱい食べた昼下がり、芝生の上。ぽかぽかと暖かい日差しが眠気を増長していく。
少し向こうでは真希と憂太が手合わせを行っているから決して静かなわけではないのだが、武器を打ちつけ合って鳴る音さえも、今は子守歌のような効果をもたらしている始末だった。
「ねーパンダ」
なんとか体育座りを維持しているあきらが口を開いた。なんだ、と聞けば、大きな欠伸を噛み殺しつつ先を続ける。
「その、ゴリラのほかにもさー、……ふわぁ、なんか、あったりすんの」
あきらの質問を受け、同じく半分寝ていそうな棘が、パンダを見る。
フム、と一拍あけてから、「あるぞ」とパンダが答えた。
「明太子」
おそらく、どんなものか、と棘は尋ねている。
パンダは答える前に、その場に溶けるように芝生の上に転がった。いきなり本物のパンダのようにだらだらしだした学友を見下ろし、あきらと棘が揃って首を傾げている。
「名付けてだらだらモード」
「……なるほど……」
じゃあ私も、すじこ、と続けて、あきらと棘が後ろに寝転がった。元々寝ぼけていた二人の目はどんどん溶けてきて、あきらなんかはパンダの腕をつついては「ふわふわモードだ……」と一人で納得している。
「だらだらモードの恐ろしいところはな、周りに感染るところだな」
もっともらしく言ってやる。
「よにもおそろしいー……」
「しゃけー……」
むにゃむにゃと言い、そのまま完全に瞼が閉じた。だらだらモードの効果により二人を眠りに落とし終え、パンダはよっこいせと体を起こした。
ゆっくり雲の流れる青空を見上げて、「平和なもんだ」と呟く。
「オマエらゴロゴロしてんじゃねえよ!」
真希が遠くから声を張り上げたので、パンダは大げさに口の前で人差し指を立て、シィーーッ!という動作を返してやった。