あきらの管理する封印用の小部屋に、男が一人連れてこられた。交流会の襲撃を行った一味の一人らしい。
時間と手間をもってすれば格上さえ封じられるあきらの術式は、普段の戦闘はともかくこういったときに重宝される。
首と腕、それから脚を大縄で拘束された男は、じきに目を覚ました。
「……こんにちは」
男は答えもせずに顔を上げ、不気味な視線であきらを見る。しばらくじろじろと眺めたと思ったら、
「キーケースが古くなってたんだった」
と意味の分からないことを言った。
黙り込んだあきらを気にもしない。
「右手を使おう。親指の裏にスナップを付けてそれで留められるようにする。なかなか洒落ててよさそうだ」
視線は言葉の通りあきらの手に向けられている。
襲撃の折、この男の仲間と思われる人物に遭遇した庵と生徒二人が、敵は柄に人間の手首から先をつけた刀を所持していたと報告を上げていた。その趣味が悪い刀を制作したのはこの男なのだろう。
あきらは眉を顰める。
モノとして見られるときの視線が、女として見られるときの視線より気味の悪いものだと、生まれて初めて知った。
「……残念ですが、あなたが何かを作ることはこれ以降ありません」
「あ?」
「乙骨憂太、宿儺の器・虎杖悠仁、最近は封印の意味がない相手がちらほらいて自信を失っていたのですが」
「何言ってやがる?」
「あなたが私の手に負える程度の呪詛師で本当によかった」
あきらは顔の前で印を組んだ。
口の中で唱えた一言を合図に、封じを強めていく。拘束している大縄が重みを増し、男は手と頭を苦しそうに垂れた。
「……この、クソアマ……!!」
「なんとでも」
踵を返し、カツカツと足音を立てて部屋の外に出た。
そこには尋問の役で訪れた伊地知が立っている。
「怒ってますね、高遠さん」
「当然です。気味の悪い男ですよ」
苦笑して入れ替わりに中に入っていった伊地知は、何の材料になるのだろうか。そんなことを一瞬でも考えてしまった自分を、あきらは恥じた。