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天気がいいので/七海

いい天気ぃ、と呟きながら、あきらは大きく伸びをした。見上げた空はどこまでも青く、雲もほとんどかかっていない。頬を撫でる風は心地よくて、季節柄気温もちょうどよかった。
やっぱり春のこの時期が、一年のうちで一番好きかもしれない。

「このままどっか行きたいなあ」

独り言のように呟いた後ろから、「同感です」と声がかけられて、あきらが振り向く。
ラフな格好のあきらとは対照的に、かっちりとスーツを着こなした七海が、腕に着けた時計を確認している。

「驚きました」
「何にですか」
「乗ってくるとは思ってなくて」

何故か感心した様子のあきらをしばらく見つめ、七海はふうと小さく息を吐いた。労働は嫌いです、と見た目に反したことを言う。
あきらはますます驚いた。そういえばこの人のことを、まだほとんど知らないのだ。

「なのでさっさと済ませましょう」

時間です、という落ち着いた声と同時に、青い空に一点の闇が生まれた。
その闇はみるみるうちに空を覆い隠し、あたりには人工的な夜が来る。ああもったいない、とあきらは少し残念な気持ちになった。

「あーあ」
「……」
「七海さん、これ終わったら散歩行きませんか」
「…………少しなら」
「やったあ」

そうと決まれば、こんな夜は早いところ終わらせてしまおう。
芝生でもベンチでも見つけて、コーヒーでもなんでも飲んで、春の陽気にぼんやりしたい。こんな日だもの、会話なんかは少なくたって構わない。

「行きますよ」

背中のケースから武器を取りだした七海が先を行く。あきらはひとつ頷いて、ちょっと張り切った足取りでその後に続いた。
呪い渦巻く場所とは言えど、恐怖なんかはちっとも無かった。