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順平と叔母

「順平、映画借りてきたよ」

ニコニコと機嫌のいいあきらは、合い鍵で家に入ってくるなりそう言って、じゃん!と効果音までつけながら近くのレンタルショップの袋を見せつけた。順平はじっとりとした目つきであきらを見遣る。

「嫌だよ」
「なんで!?」

そっぽを向いてしまった。
とは言っても別にあきらのことが嫌いだとか、そういうわけではない。
寧ろ小さい頃からかわいがってもらった覚えしかない年の近い叔母のことを、順平は家族として慕っていると思う。
元々姉妹で仲が良かったのもあって、あきらと順平との繋がりは世間一般で言う叔母と甥よりはずっと強い。
肉親の少ない順平が寂しがらないようにと、小さい頃からイベントごとの度に駆けつけては一緒に遊んでくれたし、母が外に働きに行っていた時期は家に頻繁にやってきて、夕飯を作ったり遊びに付き合ったりとよく面倒を見てくれた。
映画に興味がない母に代わって、子供向けとはいえことあるごとに映画館に連れて行ってくれたのもあきらだったから、順平の映画好きにも少なからず影響している。
だがしかし、だ。

「だって、あきら姉さん、いつも途中で寝るし」
「……」

映画館に行っても家で映画を見ていてもそうだ。気が付いたら隣で寝ている。半分も耐えていない。
面白い映画でもつまらない映画でもそうだが、人と映画を見るならばやっぱり共有したいのだ。
感想を言おうと振り向いたときに寝ていたり、あるいはつまらないねと言おうとしたときに気持ちよさそうに眠っていたり、それが毎回重なると拗ねたくもなるだろう。

あとあきらの選ぶ映画は大抵面白くない、と続けようとして、これはなんとか抑えた。
さすがに傷つくかなと思ったのである。

「今度こそ寝ないって」
「嘘だね」
「ほんとに。ねー、せっかく借りてきたんだしさあ」

お菓子も買ってきたし、コーラもあるよおいしいよとあきらは片手に下げていたビニール袋を持ち上げた。順平が小さいときから釣り方が変わっていない。

だが眉尻を下げた困り顔で見られると、やっぱり少し怯んでしまった。
結局のところ、大事な人間には厳しくなりきれない少年なのだ。

「…………ああもう、」

無言でしばらく見つめ合った後、折れたのはやっぱり順平だった。

「…………今度寝たら、もう二度と一緒には見ないからね」
「オッケーオッケー!!」

そうと決まれば!といそいそ準備を始めるあきらを横目で見ながら、順平が困ったように笑う。きっとまた眠りこけるあきらのために、ブランケットでも持ってくるかと、まずは自分の部屋に向かうことにした。