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硝子の香水

※学生時代
 

教室に入ると、ふんわりといい香りが漂っていた。
中には一つの椅子になぜか無理矢理二人で座ってじゃれている男二人と、一人静かにマンガを読んでいる硝子しかいないから、当然この香りは硝子からしているのだろう。
てくてくと側まで歩いていって、机のところにしゃがみ込む。そうして見上げた硝子からは、やっぱりいい香りがした。

「香水?」

朝の挨拶もないままいきなり尋ねるあきらを、硝子はちらりと見て、ああ、と返す。

「そういうの好きだっけ」
「別に」
「じゃあなんでいきなり」
「匂い隠し」
「あー」

あきらは呆れたような声で相槌を打った。

硝子は未成年ながら煙草を嗜んでいる。そんなことは教師連中にもとっくにバレている気がするが、どういう気まぐれか、今更ごまかす気になったらしい。
本当にごまかせているのか不思議になったので、あきらは立ち上がって、硝子の黒い髪の近くに鼻を寄せた。
香水の人工的な香りの奥にはやはり、嗅ぎ慣れた煙草の匂いが潜んでいる。あきらが首を傾げた。

「ちょっと匂いするよ」
「教師はそこまで近づかない」
「そお?」
「気づくのはあきらくらいじゃないか」
「そうかなあ」

また首を傾げてみたところで、こちらの様子を見ていたらしい五条が「見て傑、百合だよ」とふざけたことを言う。「そうだな、綺麗だね」なんて、苦笑しながら夏油が乗っかっていた。