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五条が先生してる

「今度の交流会、あきらも参加だから」

わざわざ寮のあきらの部屋を訪ねてきた五条が、いきなりそんな唐突なことを言ったので、あきらはそのままドアを閉めた。すかさず鬱陶しいくらいに長い足が隙間に滑り込み、戸を閉めたいあきらを阻む。どこの訪問業者だと溜息を吐きながら、中途半端に閉まったドアの隙間から、あきらは五条を睨みつけた。

「嫌だ」
「だーめ。決定事項です」
「他の奴が出ればいい」
「秤は停学中、憂太は海外出張。あきら以外にいないでしょ」
「無理」

短く言って一層強く五条を睨みつけた。
嫌がらせかなにかに聞こえたからだ。

あきらの術式は対人戦には全く向かない。
交流会なんていう穏やかな名前のものに参加するには、到底相応しくない代物だった。おまけに殺傷以外になんの使い道もない。
そういう自覚があきらにはあるし、だから一昨年も去年も交流会には参加せずに過ごしてきたのだ。
五条だってそんなことは知っているはずなのに。

あきらは不信感を露わにして、鼻に皺を寄せた。
あのねえ、と呆れたように五条が口を開く。

「みんな勘違いしてるけど、団体戦は対人戦じゃなくて呪霊退治だよ。大丈夫だって」

みんな勘違いしているから問題なのだ。
呪霊退治の主目的を果たすためには京都校の面々とやりあわなくてはいけないし、そうなればあきらは手を出せない。
それに一日目はなんとか呪霊だけを相手取るとして、二日目の個人戦はどうしろというのだろう。
棄権して黒星を増やすことしか、あきらにはきっとできないし、それでは一緒に戦う後輩たちに申し訳が立たない。

「フッフッフ」

あきらがそう伝えると、五条は顎に手を当てて不気味に笑った。

「……なんなの」
「まあ大丈夫だって!ホラ、先生を信じなさい」

騙されたと思って、と適当な決まり文句を五条が続ける。
表情筋の全てを使って訝しげな表情を作ったあきらを見て、五条が愉快そうに笑った。

「……何企んでるんですか」
「別に何も?僕はただ、かわいい生徒に楽しく行事に参加してほしいだけだよ」
「…………」

黙り込んだあきらは、しばらく五条を睨んで、やがてゆっくり下を向いた。
大きな手がポンと頭の上に乗って、まるで子供にするようにして撫でられる。

「一回くらい楽しみな。最後の交流会なんだから」

それはとても優しい手で、いつものように振り払うことは、今のあきらには難しかった。