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機嫌が悪い五条

※学生時代
 

今日の五条は機嫌が悪い。
ポケットに手を突っ込んで背中を拗ねたように丸め、一応ペアを組んでいる後輩のことなんでまるで無視で、舌打ちしたり傑だのなんだの一人でぶつぶつ言いながら先を進んでいる。
きっとまた、夏油と喧嘩でもしたのだろう。術式を使ってまでの大喧嘩をしてみたり、かと思えば肩を組んで笑いあっていたり、相変わらず仲がいいのか悪いのかわかりにくい人たちだ。
なんにしろ。

「五条先輩」
「あ゛?」
「今日の実習の内容、わかってます?」

仕事に機嫌の善し悪しを持ち込む人間は最悪だ。
首だけこちらに向けてヤンキーのように睨みつけてくる最悪な先輩を、あきらは負けじと睨みつけた。

「低級呪霊の一掃ですよ、一掃。さっきから五条先輩が呪力垂れ流しだから」

言葉を切って辺りを見回す。

「――何にもいないじゃないですか!」

呪霊を炙り出すための帳はとうに下りているのに、呪霊の姿は全く見えない。
気配はあるのだ。ただ規格外が遠慮もせずにそこらをうろついているから、隠れて出てこないのだった。
奴らだって生き物ではあるから、危険察知の本能くらいはある。一番面倒なパターンだ。
責められた五条が眉間にこれでもかと皺を刻んだ。

「こんなつまんない実習、俺に当てるのがそもそも間違いだろ」
「こんなつまんない実習もろくにこなせないんですか?」
「…………」
「だだこねてないでせめて大人しくしてください。嫌なら私一人でやりますから、後ろに下がって」

言うなり早足で五条を追い越した。じっとりとした視線を向けてくる五条にため息を吐き、あきらは腰につけたポーチの中をごそごそと探る。
終わったら食べようと思っていたお菓子の小袋を取り出して、五条に差し出した。

「チョコでも食べて落ち着いてください」
「お前さあ……」
「いらないんですか」
「…………いる」

前に向き直ると、あきらはピンと背中を伸ばして歩き出す。後ろからぽりぽりとチョコを食べる音と、それから甘い香りが漂う。
ちょっと落ち着いたようで、圧迫感はある程度収まっていた。

「五条先輩」
「…………何だよ」
「煮干しとか毎日食べるといいですよ、苛つきすぎだから」
「…………」

あきらの辛辣なアドバイスを聞いて、五条は無言で喉にチョコの残りを流し込む。
空になった袋を丸めて後輩の背に投げつけてみたものの、ビニールはすぐさま広がって、あきらの手前でぽてんと落ちた。