※学生時代
「あんたその顔じゃなきゃ許されてないからね。百回は殺されてるからね」
「俺は最強なのであきらごときに殺されませ~ん」
「ムカつく!」
「悔しかったら一級に上がってみればぁ。なんなら推薦してやろうか」
からかうような表情に存分に腹を立てていると、五条がいきなりん?と首を傾げた。気になったので苛立ちの滲んだ声のまま、あきらが「何よ」と問い掛ける。
「いや、ていうかあきら、俺の顔好きなの?」
「…………」
「マジで?」
失言だった。本当に失言だった。
弱点がバレたあの日から、五条の距離がとにかく近い。
ぼーっとしていて声をかけられたと思ったらすぐそばに五条がいて飛びのいたり、普通に歩いていたら後ろから抱き込まれたり、目が合うと笑いかけてきたり、壁に追い詰めてみたりと、あの手この手で五条はあきらに造形の良さを見せつける。
頑張るねえと、他人事として笑っている周りが憎い。
大体あのとき、しっかり否定しておけばよかったのだ。
図星を突かれて、つい狼狽えてしまった。嘘を挟む余裕がなかった。
素直に認めたくはないけれど、あきらは確かに、五条の顔のことを、この世で一番綺麗だと思っている。
「あんたさ」
「ん?」
今日も今日とて五条が近い。
ソファーのすぐ隣に座って、お互いの太ももが制服越しに触れ合うくらいぴったりとくっついている。
文句を言おうと横を向くと、渾身の微笑みで何も言えなくされてしまうのがわかっていたので、あきらは横を見ないように気をつけた。
そのまま歯切れ悪く問いかける。
「その、それでいいの」
「それでって何が?」
「私が好きなの本当にあんたの顔だけなんだけど」
なぜかわからないが自分が好かれていることだけは、この数日で嫌という程理解している。
顔が好きだということもバレた。
付き合ってよとも言われたし、本気なのか演技なのかは直視していないのでわからないが、切なそうな表情を見てしまうと、つい頷きそうにもなる。
でもそんなものでいいのだろうか。
顔が好きなんて、人を好きになる理由としては不誠実だという意識があきらにはあった。
「もし私がこのままうんって言ったとして、それであんたは嬉しいの」
「別に嬉しいけど」
「…………」
「性格も顔もどっちも生まれ持ったもんじゃん。大して変わんないよ。利用して何が悪いわけ?」
生まれ持った才能と立場とを毎日存分に振るう男は随分あっけらかんと言った。さすが年季が違う。
それでも眉を寄せ、沈黙しているあきらに五条が大きな息を吐く。
「あきら」
名前を呼ばれた。
あきらはちら、と横目で五条を見た。
「あきらが俺の物になるなら、何でもいいよ」
こんなの言わなきゃわかんない?と呆れたように言われて腹が立ったけれど、悪戯っぽく笑う顔はやっぱり、この上なく整っていた。