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沖縄にて/七海・灰原

※学生時代
 

「沖縄~っ!」

わあい!と降り立つなり諸手を挙げて喜んだテンションの高いあきらを見て、七海は眉間に皺を寄せた。とても星漿体の護衛という重要任務を担っているとは思えない軽さだ。
あきらは後ろに続く後輩の思いも知らず、くるりとこちらを振り返った。七海と、いきなりの要請でこんな遠くまで出向いたにもかかわらず溌剌としている灰原とを順に見て、ニコッと笑う。

「じゃあ私あいつらのところ行ってくるから」
「待ってください」

当然ながら止めに入った七海をあきらが不思議そうな顔で見た。なぜそんな顔ができるのか七海の方が聞きたいくらいだ。

「任されているのは空港の警戒でしょう。どうして高遠さんまで」
「それはあんたたち二人で大丈夫でしょ」

あきらがあっけらかんと言った。ねえ、と灰原に同意を求める。「頑張ります!」と元気な返事が響き、あきらがよく言ったと上機嫌で褒めた。

「……一年二人で熟せる任務とは思えません」
「またまたぁ」

あきらが目を細めて七海を見た。

「別に実力不足とは思わないよ。あいつらもそうでしょ。ある程度あんたらのこと信頼してるから呼んだんじゃん」
「…………」
「それにあっちはあっちで私がいなきゃやりにくいんだって。星漿体って女の子だから、男のあいつらがつきっきりでいるわけにはいかないでしょ。世話係の人だけじゃ万が一の時守りきれないし」

あきらの言い分は尤もにも聞こえる。しかしそれだけでは納得しきれない七海は、じっとりとした目であきらを見ていた。
その責めるような目つきに少し苛立ったらしいあきらが、ああもう!と声を上げる。

「灰原!」
「はい先輩!」
「直接呪詛師の襲撃受ける可能性が高い護衛と、空港の警戒とどっちが負担大きいと思う!?」
「護衛です!」
「だよね~っ?」

あきらが手を伸ばすと、灰原は嬉しそうに頭を差し出した。いいこいいこと撫でられている同級生を見て七海が更に苛ついた表情を見せている。

「というわけで私は行くから」
「…………わかりました」

納得したのではない。どうせ何を言っても無駄だということがわかって諦めたのだ。
これ見よがしな七海の溜息を無視し、あきらがまた上機嫌に笑う。

「私実は沖縄初めてなんだよね!」
「そうなんですか?」
「海にいるっていうからさー、楽しみすぎて水着中に着てきた」

ほら、と徐にあきらが制服のカッターシャツの襟元を引っ張った。あきらは首元が窮屈だと言っていつも二つほどボタンを開けているから、七海と灰原にはそれだけで下着によく似たそれと、普段は見えない白い肌が見えてしまう。

――さすがにそれはないだろう。

あまりのことに言葉をなくして突っ立っている二人に、あきらは笑顔で言い渡した。

「じゃあ私行ってくるから!しっかりやれよ!」

すぐ近くに待ち受ける楽しみで頭がいっぱいで、固まっている後輩のことには気づいていないらしい。
鼻歌を歌って駆け出すあきらの後ろ姿を見て、さすがの灰原も頬をかいて苦笑している。

「……ちょっとラッキーだったね、七海」
「黙ってください」

苛立ちばかりが降り積もる、嫌な任務の幕開けだった。