※学生時代
高専への定期連絡、空港の警戒を任せている七海と灰原の現状把握、帰りの段取りとやらなければならないことは山ほどある。どちらかというとそういった事務仕事を期待されているあきらは、護衛の仕事を五条と夏油に任せて割り当てられたホテルの一室に戻っていた。
今頃四人は食事を終わらせている頃だろうか。
羨む気持ちは特にない。ただあの小さな女の子が、このひと時を楽しんでくれたらいいと思うだけだ。
「あきらー、開けて」
ふとガンガンと部屋のドアを叩く音と、それから声が聞こえて、あきらはメールを打つ手を止めた。
知った声だ。
扉を開けると昼の浮かれた格好のままの五条がいて、あきらに向かってハイとビニール袋を差し出した。
「何これ」
「メシ」
押し付けられた袋の中には確かに色々と食べ物が入っている。ほとんどお菓子なことに苦笑しているうちに、五条はずかずかと部屋の中に入ってきた。
「ガキんちょの相手で疲れた。なんだあいつ体力無尽蔵かよ」
ぶつくさと言う五条が、我が物顔でベッドに腰掛けると、手に持った栄養ドリンクをぐっと飲み干している。
もちろんそればかりでないのを、あきらは知っている。
五条はこの護衛の任務が始まってからずっと術式を維持したままだ。体力的にも精神的にも、当然削られているだろう。
平気を装う顔にだって疲れが僅かに滲んでいる。
「お疲れ」
「……ん」
本心からの言葉に五条が頷いた。少し表情が緩む。
「あきら」
「なに?」
「こっち来て」
バシバシと自分の横あたりを手で叩く五条に笑って、あきらは大人しく言うことに従う。
隣に座ると、五条がごろりと寝転がった。あきらの膝の上に頭を乗せてはーあと気の抜けた息を漏らしている。
驚く間もないような早業に、あきらは笑って受け入れるしかない。
「疲れた」
「うん」
「寝そうだったら起こして」
「わかった」
触れているところから伝わる体温が高かった。相当眠くはあるのだろう。
いつもより甘えの滲む言葉にひとつずつ返しながら、あきらは五条の柔らかい髪を撫でる。
軽薄に見えて自分の役割を自覚している五条は、きっとこんな状況でも、眠ることなどないのだろうが、少しでも気持ちが楽になるならそれでいい。
あきらがしてやれることなんてこれくらいのものだ。
五条の頭を撫でながら、報告の続きをしようと携帯を取り出すと、今はやめろと怒られたのでさすがに困ってしまった。