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きみはともだち/東堂

昔から怖い物を見た。よくないものだということは、本能でわかっていたから、側を通るときはいつも目を伏せた。見ない振りをした。小学生のときも中学生の時も、同級生には幽霊が見えるという女の子がいたけれど、彼女たちとあきらが見ているものは多分違っていた。
まともに人の形をしているものなんて、あきらは見たことがない。

「――大丈夫か?」

衝撃に備えてぎゅっと目をつむっていたあきらは、浮遊感とかけられた声に驚いて恐る恐る目を開いた。
近くにあきらの顔をのぞき込む男の顔があって、ひゃっと悲鳴を上げる。横抱きにされているのに気づくと尚更怖くなった。

「大丈夫そうだな」

ろくに答えもしなかったあきらに怒りもせず、その人はあきらをゆっくりと下ろした。地に足をつけたあきらが、きょろきょろ辺りを見回す。どこにでもありそうな、ただの住宅街だった。夕日が照らし出す辺りには、先ほど自分を追いかけてきた異形の姿はどこにも見えなかった。
安心したように息を吐くと、あきらは自分よりも随分背の高い恩人を見上げた。

「あ、あの、ありがとうございました。助けてくれたんですよね?」

あっという間のことだったのでよくわかっていないが、学ラン姿のこの男の人が、あきらを助けてくれたのは間違いない。怪我とかないですか、ていうかあなたもあれが見えるんですか、と疑問を続けるあきらに向かって、男が手のひらを突きだして制止した。

「礼には及ばん」

びっくりしているあきらを見ているのかいないのか、構わず続ける。

「高遠ちゃんに何かあったら、高田ちゃんが悲しむからな」

無事でよかった、と言いおいてあきらに背を向けた男に、あきらはよくわかっていないながら待ってくださいと声をかけた。

「な、名前を……」
「名乗るほどの者でもないさ」

男は脱いだ上着を肩に掛けると、夕日に向かって歩いていった。あきらはそれをぽかんとしながら見ていた。

**

「ああっ!!?」

翌日の握手会で、親友のいるレーンにデレデレした顔をして並ぶ恩人の姿を見つけ、あきらは大いに驚いた。