「はあ、俺も京都行きたかったなあ」
ここまでは青筋を立てながらも我慢していた。歌姫先輩はとってもえらい。
「来年はそっち行きたいからさ、今回は歌姫も頑張ってね」
「…………五条、あんたねえ……!!」
負ける気なんてちっともないくせに、あきらと同じ学年らしい東京校の五条悟はそう言って歌姫を煽った。
眉間に皺を寄せ額に青筋をいくつか作った歌姫が、この間奥の手よと言いながら新調していた呪具を取り出し、今にも投げつけんと振りかぶっている。
「う、歌姫先輩!」
「あきら!離しなさい!」
「駄目ですまだ始まってませんー!!」
すかさずその細い腰に取り付いて、あきらは必死になって先輩を止めた。
五条とやらは安全圏からべーっと子供のような仕草で舌を出してこちらを挑発している。
隣の男子生徒が苦笑したところで、五条は後ろから現れた向こうの先生にゲンコツをくらい、その場にしゃがみこんで唸った。歌姫はフンと鼻で笑い、大人しくなる。
「……はー」
こんなんで二日間も大丈夫なのかな。
先輩の腰にまだ抱きつきながらちょっと胃が痛くなってきた、苦労性のあきらである。