最近のあきらはゲームにはまっていて、携帯できるのをいいことにゲーム機を持ち歩き実習の現場に移動する車の中でもピコピコやっているし、食事も手早く済ませてピコピコ、風呂も時間ぎりぎりになるまで入りにいこうとしない。当然睡眠時間も削る。
同級の禪院真希は最初いちいち怒っていたが、やることが多いんだもんあともうちょっととどう言ってもあきらに聞く気がないのでそのうち諦めてしまった。
というわけで、口うるさい者がいなくなった今、あきらは思う存分眠る時間を削ってゲームに費やしている。
本日は寮の談話室のソファーのひとつを陣取って、日付を越えようという時間になっても動く気配がない。
「……こんぶ」
とんとん、と指で肩を叩かれて、あきらは声の主へ目を向けた。棘が無言で時計を指さすのを見て、うえっと顔をしかめる。
「わかったわかった、そろそろ寝るから」
「おかか」
ちっともわかっていなさそうなあきらの返答に棘が厳しいつもりの言葉を返した。しかしそれくらいでは、普段から意志の疎通がいまいちうまくいかないあきらのことだ、聞き流して終わりである。
へーへーと適当な返事のあと、ゲーム機の画面を見ることに集中し始めたあきらに、棘がじっとりとした目を向けた。
「おかか!」
「はいはい。ごめんって」
「明太子」
「わかりませーん」
「…………あきら」
「はいはい、……ん?」
不意に名前を呼ばれ、驚いたあきらが滅多にしゃべらない同級生の顔を見た。
いつも口元を隠すネックウォーマーを首まで下げて、刻まれた呪印も露わである。咄嗟に耳を塞ぐより前に、棘の声は容易く届いた。
「『眠れ』」
途端に襲い来る眠気に耐えようとするが、抵抗も虚しくあきらの手がゲーム機を取り落とす。
「おっ、覚えてろよ、いぬま…………」
ぐう、と最後まで言い切ることなく眠りに落ちた同級生を支え、棘がため息を吐いた。
全く世話の焼ける同級生だ。女子寮に勝手に入るわけにはいかないので、毛布くらいは自分の部屋から持ってきてやろう。