寮の大浴場で五条悟とか言う困った人間に出くわしたのが七海の運の尽きだった。
さすがに風呂では隠すこともないのか、露わになった青い目をこれでもかと見開いて、五条は「デカッ!!」と叫んだ。
目線は思いっきり下で、どこのことを言っているのかは丸わかりだ。
傑、傑ー!!と何かあるとすぐに親友を呼びつける五条は今日もいつも通りで、呼ばれてやってきた夏油もいつも通り五条には甘かった。デンマークやばっ!と騒ぐ五条を苦笑するばかりで咎めもしない。
その翌日である。
休日だったので、午後からあきらと組み手の約束をしていた。
まだ戦闘というものに慣れない七海にとって、加減を知り教える気がちゃんとある先輩という存在は結構ありがたい存在だ。
存在なのだが、今日の彼女はなにやら落ち着きがなく、隙も多い。
「――どうしたんです」
お互い距離を取り、動きが止まったところで、七海が切り出した。
あきらがえっと大げさに驚き、七海から視線を逸らす。アハハと乾いた笑いが届いた。
「体調でも悪いんですか?」
「え!?いや、別に」
「ならどうしたんです」
「何も!!?」
わかりやすい嘘にため息を吐く。
休憩を申し出ると、あきらは二つ返事で頷いて、ジュースおごってあげるとやたら大きい声で言ってから七海の返事も聞かずに走り出す。
「五条先輩に何か聞きましたか」
後ろ姿に問いかけると、耳がいいのか聞こえたようで、あきらが走る勢いもそのままにすっころんだ。
五条の笑い声が聞こえたような気がして、七海は額をぐっと押さえた。